”常識”を考える ー集団の中で生きることー
安藤です。
しばしば新入社員研修やビジネスセミナー等で使われる「メラビアンの法則」というものをご存知ですか?
この「メラビアンの法則」が新入社員研修やビジネスセミナー等で使われるとき、担当者からはよくこういわれます。
”メラビアンの法則に基づくと人の印象を決定づける要素は見た目が半分。次に声のトーンや話し方が4割で、話す内容は1割にも満たない。だから、話の内容よりもパッと見や話し方がもっとも大切なのだ”
というものです。
しかし実はこれはいわば俗流解釈であり、アルバート・メラビアンが自身の実験に基づいて1971年に提唱した解釈とは異なるものなのです。
メラビアンが行った詳しい実験についてはここでは割愛しますが、この実験とその解釈を要約すると
あからさまに怒っている表情で”怒ってないよ”と言った時のように
同時に発せられる矛盾したメッセージ(怒っている顔と「怒ってない」という言葉)を受け取ると、半分以上の人がその印象を見た目によって決めるというものです。
あからさまに不機嫌な顔をしている人に「…なんか怒ってる?」ときくと「全然怒ってないし」と答える。
「…。いやいや、絶対怒ってるでしょ!笑」と思うやつです。
このように、「メラビアンの法則」は世間に流布している解釈と本来の解釈には大きな相違があるのですが、確かに第一印象は非常に大切で、清潔感や明るい雰囲気はビジネスに不可欠な要素だと思います。
しかし、今回問題としてあげたいことは、こういった異なる解釈が平気で世間に流布していること。
そして多くの優れた大人たちが誤解したまま新入社員やセミナー受講者に教えていることです。
今回は俗流解釈そのものも間違っているとは思わず、ある意味大切であると思えることでしたが
これが仮に”特定の他者や組織、文化を批判する”ような極論的な解釈であったらすごく怖いですね。
これに関連したことに「アビリーンのパラドックス」という集団心理があります。
ある集団に属する人々が集団の嗜好=全員の意思だと思い込み、
本当は誰も望んでいないにも関わらず誤った結論や行動を起こしてしまうことを示しています。
”事なかれ主義”が多いとされる日本人には特にこの心理が働きそうです。
「多勢に無勢」ではなく、広く当然だと信じられていることに”こそ”注意を向けて見てみることが今、インターネットの情報の海で生きる私たちに求められる力かもしれません。
安藤